大いなる母、“始源の竜”に“剣”が突き立てられ、殺されたことで今の世界は生まれた。
流れ出た母竜の血は海原に、肉は陸地になったという。
汚染された星――旧世界に、“竜”の身体を新世界というテクスチャにして被せ、“剣”を楔として縫い留めている。
旧世界と新世界では自然法則が異なり、新世界においては『意志』が強い力を持ち、より直接的に――時には、物理的な――影響を及ぼすことがままある。即ち、『希望』『祈り』が世界を豊かにし、『絶望』『呪い』が世界を壊すのである。
人間。霊長。ヒト。
広義にはエルフやドワーフなどの亜人、更には獣人も含む。
狭義には“真人”“プレーン”と呼ばれる、最も特徴のない、しかし最も繁栄している種を指す。
真人。只人。
最も特徴なく、しかし最も栄える霊長。
“プレーン”から分かたれた霊長種、エルフやドワーフなどを指す。
一説には、神代にプレーンが竜の力を得て進化したものとも言われている。
亜人よりも更に、竜に近い存在(=獣)の要素を持った人。あるいは、人の似姿を得た獣、とも。
学術的には、亜人=人から進化したもの、獣人=獣が進化したもの、と分類する向きがあるが、一般的な認識としてはその境界は曖昧で、たんに外見的に獣の要素が強ければ獣人とされる。
この世界の最強種、と言われる生命。ドラゴン。
標準的には巨大な爬虫類に被膜の翼が生えたような姿が多いが、個体差が激しく、一般的なイメージからかけ離れた姿であることもしばしば。
肉体は強靭、また非常に長命であり、その寿命は人では確認出来ていない。
知能は非常に高く、人語を解するものは珍しくない。人間が忘れた古代の言葉すら識っているものもいる。
強力な個体になると自然現象を操る能力を持ち、それを以って己の周囲に人が踏み入ることが困難な領域を作り出す。これを俗に“竜の巣”と呼ぶ。操る現象は個体によって傾向があり、発火現象や火山噴火を起こすものは炎竜、突風や竜巻・台風ならば風竜や嵐竜、洪水や津波ならば水竜などと呼ばれる。
多くの竜はあらゆる種に対して中立だが、稀に他の種に対して牙を向く悪竜が現れる。これらは並大抵の力では対峙することすら困難だが、それでも立ち向かう勇者が現れ、打倒された暁には、彼らは“竜殺し”の英雄として讃えられ、後世まで語り継がれることとなる。
それ故、敢えて中立の竜の“巣”へと向かい、これを狩って名を挙げようとするもの達も居るが、成功することは殆どない。
この世界に生まれながら、この世界に致命的な害をなすもの。悪性新生命。ワールドキャンサー。
世界のあらゆるものから生まれ得るが、しかしその殆どは成長する前に世界の免疫機構に排除される。
極々稀に成長しきってしまった場合、文明が滅ぶほどの大災害を世界に齎す。
竜は本来、これを排除する為の免疫機構の一部である。が、その竜からですら、これは生まれる。
もし、竜より生まれし魔が完全に成長してしまった場合、文明どころではなく、世界の生態系がリセットされる程の大絶滅が引き起こされる。
この世界において、強固な意志は現実を侵す。例えば、「燃えろ」と強く念じるだけで、実際に目の前のものを燃やすことが出来うるのだ。
しかし実際の所、普通の人が念じるだけで物理的な結果を発生させることは非常に稀であり、出来たとしても、自由自在にコントロールするのは困難である。
この不安定な“奇蹟”を、言葉を発したり文字を刻んだり、あるいは別の存在の力を借りたりすることで、より確実に、自在に起こせるように体系化された技術を、『魔法』と言う。
本来は移ろいやすく曖昧な“意志”を、言葉を発したり文字として刻んだりすることで、より強固で具体的なものにする、という考えのもとに体系化された魔法。
扱う言葉や文字は、この魔法が体系化されたと言われる古代言語を基本的に用いる。
魔法としては最も一般的。魔術とも。
扱う者はたんに魔法使い、あるいは魔術師と呼ばれる。
信仰による祈りで、奇蹟を起こす魔法。
同じ信仰を持つものが多いほど、結果がより安定していく。
一般的には「神の力を借りている」と認識されているが、祈りの言葉を発したり、聖句や聖印を刻んだりして奇蹟を起こす為、実体は意詞魔法に近いのではないかと言われている。
たんに“奇蹟”などと言われたりする。
扱う者が魔法使いと呼ばれることは少なく、大抵の場合は神官と呼ばれる。